FIT・FIP認定を受けた太陽光発電事業では、認定後に登録内容が変わった場合、その内容に応じた変更手続きが必要です。
例えば、次のような変更が考えられます。
- 太陽光発電所を売買した
- 相続によって事業者が変わった
- 法人の住所や代表者が変わった
- 太陽光パネルやパワーコンディショナーを変更した
- 設備の出力を変更した
- 保守点検責任者を変更した
しかし、変更手続きには、
- 変更認定申請
- 事前変更届出
- 事後変更届出
があり、「どの手続きを選べばよいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、FIT・FIP認定後の3つの変更手続きについて、それぞれの違いや代表的な変更例、申請時の注意点を分かりやすく解説します。
FIT・FIP認定後の変更手続きは3種類
認定を受けた再生可能エネルギー発電事業計画を変更する場合、変更内容に応じて、主に次のいずれかの手続きを行います。
| 手続き | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 変更認定申請 | 事業計画の重要な内容を変更するとき |
| 事前変更届出 | 認定までは不要だが、変更前の届出が必要なとき |
| 事後変更届出 | 変更後に届け出れば足りるとき |
このほか、調達期間が終了した設備については「卒FIT事前変更届出」が必要になる場合もあります。
どの手続きになるかは、変更内容だけでなく、認定年度、設備区分、出力、変更理由などによって異なることがあります。必ず資源エネルギー庁の「変更内容ごとの変更手続の整理表」で確認する必要があります。
変更認定申請とは
変更認定申請とは、認定を受けた事業計画のうち、重要な事項を変更する場合に、あらかじめ経済産業大臣の認定を受ける手続きです。
単に変更内容を報告するのではなく、変更後の事業計画について、改めて認定基準への適合性の審査を受けます。
そのため、原則として、変更認定を受ける前に変更を実行しないよう注意が必要です。
変更認定申請となる代表例
変更認定申請の対象となる代表的な変更には、次のようなものがあります。
- 売買や生前贈与による事業者変更
- 会社分割・合併による事業者変更
- 密接関係者の変更
- 発電設備の出力変更
- 太陽光パネルの一定規模以上の増設・減設
- 土地の地番の追加・削除
- 発電設備の移設
- 自家発電設備や蓄電池の追加
- 接続契約の主要事項変更に伴う再締結
- 保守点検責任者を別の事業者へ変更する場合
ただし、同じ項目の変更でも、変更の理由や規模によって事前変更届出や事後変更届出となる場合があります。
例えば、法人の代表者変更についても、密接関係者の変更に該当する代表者変更は変更認定申請となりますが、単純な代表者変更は事後変更届出で足りる場合があります。
売買による名義変更は変更認定申請
太陽光発電所を売買し、認定事業者を売主から買主へ変更する場合は、一般的に変更認定申請が必要です。
申請を行うのは、原則として譲受人である買主です。
主な添付書類としては、次のようなものがあります。
- 譲渡契約書または譲渡証明書
- 売主・買主双方の公的証明書
- 売主・買主双方の印鑑証明書
- 土地の取得または利用権を証明する書類
- 事業実施体制図
- 関係法令手続状況報告書
事業者変更は、単なる氏名の書換えではありません。買主が発電事業を適切に引き継げるかについて審査されます。
事前変更届出とは
事前変更届出とは、変更認定を受けるほどの重要な変更ではないものの、変更を行う前に届け出る必要がある手続きです。
変更認定申請とは異なり、経済産業大臣の「認定」を受ける手続きではありません。
ただし、変更後に届け出ればよいわけではなく、対象となる変更を実施する前に届出を行う必要があります。
事前変更届出となる代表例
代表的なものとして、次のような変更があります。
- 発電設備の名称変更
- 一定の場合の事業区域面積の変更
- 太陽光パネルに関する一定の変更
- 配線方法の変更
- 接続契約締結先の変更
- 保守点検責任者に関する一定の変更
- 保守点検・維持管理費用の変更
- 廃棄等費用に関する一定の変更
- 事業実施工程の変更
ただし、発電設備の名称変更でも、事業者名の変更に伴って名称も変更する場合は、事業者変更の変更認定申請と一緒に手続きできる場合があります。
また、地番の追加・削除を伴う事業区域の変更は、事前変更届出ではなく変更認定申請になるなど、項目名だけでは判断できないケースがあります。
事後変更届出とは
事後変更届出とは、変更後にその内容を届け出る手続きです。
事業計画の根幹に影響しにくい変更や、公的な手続きによって変更内容が確定した後に届け出ることが適切な項目が対象になります。
事後変更届出となる代表例
代表的なものとして、次のような変更があります。
- 相続による事業者変更
- 法人の社名変更
- 婚姻・離婚などによる戸籍上の氏名変更
- 法人の単純な代表者変更
- 事業者の住所変更
- 法人番号の登録・変更
- 課税事業者の該否に関する一定の変更
- 市町村合併や住居表示実施による設備所在地の変更
- 保守点検責任者の社名変更や担当者の異動
例えば、相続によって認定事業者を変更する場合は、売買による事業譲渡とは異なり、事後変更届出の対象です。
同じ「名義変更」であっても、売買なのか相続なのかによって手続きが異なります。
3つの変更手続きの違い
それぞれの違いを簡単に整理すると、次のようになります。
変更認定申請
事業計画の重要事項を変更するときに、変更前に認定を受ける手続きです。
審査が行われ、案件によっては説明会または事前周知措置も必要になります。
事前変更届出
認定までは不要ですが、変更前に届け出る必要がある手続きです。
届出を行ったうえで変更を実施します。
事後変更届出
変更後に届け出る手続きです。
相続や法人の社名変更など、変更後の公的書類をもとに届け出る項目が多くあります。
「変更前か変更後か」だけで判断してはいけない
事前変更届出と事後変更届出の大きな違いは、変更前に届け出るか、変更後に届け出るかです。
ただし、
まだ変更していないから事前変更届出
すでに変更したから事後変更届出
と自由に選べるわけではありません。
変更項目ごとに、変更認定申請、事前変更届出、事後変更届出のどれに該当するかが定められています。
本来、変更認定申請が必要な内容を先に変更してしまった場合でも、事後変更届出へ切り替えられるわけではありません。
手続きをせずに変更を実行すると、認定計画と実際の設備・事業内容が一致しない状態になるため注意が必要です。
変更認定申請で売電価格が変わることがある
変更認定申請の中には、FITの調達価格やFIPの基準価格が変わらないものと、変更される可能性があるものがあります。
資源エネルギー庁の整理表では、
- ○:調達価格・基準価格が変わらないもの
- ●:調達価格・基準価格が変わる可能性があるもの
として整理されています。
価格変更の可能性がある代表的な変更には、次のようなものがあります。
- 発電設備の出力増加
- 太陽光パネル合計出力の一定規模以上の増減
- 自家発電設備・蓄電池の設置
- 接続契約の主要事項変更による再締結
一方、売買による事業者変更だけであれば、整理表上は原則として価格が変わらない変更として扱われています。
ただし、事業者変更と同時に出力やパネルなども変更する場合は、別途価格への影響を確認しなければなりません。
同じ設備について複数の変更手続きを同時に進められない
電子申請では、同じ事業計画について複数種類の変更手続きを同時に行うことができません。
例えば、
- 事業者変更の変更認定申請
- 住所変更の事後変更届出
を同じ設備について同時に進めることはできません。
一つの手続きが完了してから、次の手続きを行う必要があります。
また、事後変更届出の対象事項を、変更認定申請の入力項目にまとめて変更することもできません。申請と届出は分けて行う必要があります。
そのため、変更項目が複数ある場合は、どの順番で手続きするかを事前に整理することが重要です。
運転開始後、最初の変更手続きで必要になる書類
発電設備の運転開始後、初めて変更認定申請、事前変更届出または事後変更届出を行う場合は、運転開始日を登録する必要があります。
その際、電力会社が発行した次のような書類を添付します。
- 受給開始日が分かる書類
- 売電開始日が分かる契約書
- 電力受給が開始されたことを証明する資料
運転開始日が電子申請システムへ登録されていない古い設備では、変更内容とは別に、この資料の準備が必要になることがあります。
電力会社の手続きが先になる変更もある
接続契約に関する変更などでは、FIT・FIPの手続きより先に、電力会社へ変更内容を申し込む必要があります。
一般的な流れは次のとおりです。
- 変更後の内容で電力会社へ接続・契約変更を申し込む
- 電力会社から接続同意書類を取得する
- 接続同意書類を添付して変更認定申請または届出を行う
- 変更認定通知書や届出受理が分かる資料を電力会社へ提出する
- 電力会社との変更契約を完了する
接続同意書類と変更申請の内容が一致していない場合は、申請不備となる可能性があります。
資源エネルギー庁も、接続契約の主要事項が変更され、契約が再締結された場合には、価格変更を伴う変更認定申請が必要になるケースを案内しています。
変更認定申請では説明会等が必要になる場合がある
変更認定申請の対象となる「重要な事項」を変更する場合は、変更申請前に説明会または事前周知措置が必要になることがあります。
代表的な例として、次のような変更があります。
- 売買による認定事業者の変更
- 会社分割・合併による事業者変更
- 認定出力の一定の変更
- 設備の設置場所に関する重要な変更
原則として、変更認定申請日の3か月前までに説明会等を実施する必要があります。
説明会が必要か、事前周知措置で足りるかは、設備規模や設置場所、変更内容などによって異なります。
申請日は「入力を始めた日」ではない
電子申請では、システムへ入力を始めた日が申請日になるわけではありません。
資源エネルギー庁の整理表では、申請日は次のように整理されています。
- 通常の電子申請:申請状態が「申請書出力済」または「申請書出力済(認証済)」となった日
- 50kW未満太陽光の電子申請:申請状態が「設置者承諾済」となった日
- 紙申請:担当部署へ申請書類が到達した日
価格変更や期限が関係する手続きでは、申請日の考え方が重要になります。
代行を依頼する場合は原則として申請ごとに委任状が必要
行政書士などへ手続きを依頼する場合、原則として申請・届出ごとに委任状が必要です。
また、申請者や代行者の印鑑証明書が必要になることがあります。
公的機関が発行する書類は、被相続人の戸籍・除籍関係書類など一部を除き、原則として申請日前3か月以内に発行されたものが求められます。
GビズIDによる認証を行う場合は、印鑑証明書を省略できるケースがあります。
変更手続きをしないとどうなる?
2026年6月には、資源エネルギー庁からも、変更届出や変更認定申請を失念しないよう注意喚起が出されています。
必要な変更手続きを行わないと、認定情報と実際の事業内容が一致しない状態になります。
その結果、次のような問題につながる可能性があります。
- 次の変更申請を進められない
- 電力会社の名義変更が完了しない
- 売電収入の振込先を変更できない
- 事業譲渡や相続手続きが進まない
- 国から補正や報告を求められる
- 指導・改善命令の対象となる
- 重大な場合には認定取消しの問題が生じる
「小さな変更だから届出は不要」と自己判断せず、変更前に手続きの要否を確認することが重要です。
よくある質問
設備を変更すると、必ず変更認定申請になりますか?
必ずしも変更認定申請になるわけではありません。
変更する項目や規模、変更理由によって、変更認定申請、事前変更届出または事後変更届出に分かれます。参考記事でも、変更内容だけで手続きを判断せず、最新の整理表を確認することが重要とされています。
事前変更届出と事後変更届出の違いは何ですか?
事前変更届出は、対象となる変更を実施する前に届け出ます。
事後変更届出は、変更後に届け出ます。
ただし、事業者が自由に選択できるものではなく、変更項目ごとに手続きが定められています。
売買と相続では同じ名義変更手続きですか?
異なります。
売買による事業譲渡は、原則として変更認定申請です。
相続による事業者変更は、事後変更届出として整理されています。
添付書類は毎回同じですか?
変更する項目ごとに異なります。
例えば、事業譲渡では譲渡契約書や当事者双方の印鑑証明書などが必要ですが、相続では戸籍、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などが必要です。
変更事項が複数ある場合はまとめて申請できますか?
変更認定申請に含めて変更できる項目もありますが、事前変更届出や事後変更届出の対象事項をすべて一つにまとめられるわけではありません。
同じ設備について複数種類の手続きを同時に進めることもできないため、手続きの順番を整理する必要があります。
まとめ
FIT・FIP認定後に事業計画を変更する場合は、変更内容に応じて次の手続きが必要です。
- 変更認定申請:事業計画の重要事項を変更するとき
- 事前変更届出:認定までは不要だが、変更前の届出が必要なとき
- 事後変更届出:変更後に届け出るとき
重要なのは、手続き名を変更のタイミングだけで判断しないことです。
同じ名義変更でも、売買は変更認定申請、相続は事後変更届出となるなど、変更原因によって手続きが異なります。
また、変更内容によっては、売電価格への影響、電力会社との事前調整、説明会・事前周知措置も関係します。
当事務所では、太陽光発電に関する変更認定申請、事前変更届出、事後変更届出の手続きをサポートしております。
「どの手続きになるか分からない」「複数の変更をどの順番で進めればよいか確認したい」という方は、お気軽にご相談ください。
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