建設業許可は承継できるのか?
建設業許可は会社や個人の信用を示す大切な資格です。
しかし、代表者の死亡や会社の合併・分割などで経営体制が変わったとき、「許可はそのまま引き継げるのか?」 という疑問を持つ方は多いでしょう。
結論からいうと、建設業許可は原則「承継(引継ぎ)」が認められていません。
つまり、新しい法人や新しい個人が「新規に建設業許可を取り直す」必要があります。
ただし、一定の要件を満たした場合に限り、例外的に承継が認められるケースがあります。
建設業許可の承継が認められる3つのケース
建設業許可の承継が可能なケースは、大きく分けて次の3つです。
1. 相続による承継(個人事業主の死亡の場合)
個人事業主が建設業許可を持ったまま亡くなった場合、そのままでは事業を続けられません。
この場合、相続人が一定の要件を満たすことで、許可を承継することができます。
- 承継できるのは「相続人(子どもや配偶者など)」
- 相続人自身が「経営業務管理責任者や専任技術者の要件を満たしている」必要あり
- 相続発生から一定期間内(通常30日以内)に「相続承継の手続き」を行う必要がある
相続後に承継が認められれば、新規申請をやり直すことなく事業を継続可能です。
2. 法人の合併・分割による承継
会社の合併や分割により法人格が消滅した場合、通常であれば建設業許可も消滅します。
しかし、合併や分割に伴って設立された新法人が承継手続きを行えば、許可を引き継げる場合があります。
- 合併後の法人が要件を満たしていること
- 分割後の法人が許可承継を希望する場合も、要件を満たす必要あり
- 承継届の提出期限は、合併・分割の効力発生日から30日以内
3. 事業譲渡による承継
建設業許可を持つ会社から、建設業を別の会社へ譲渡する場合も承継が可能です。
- 譲渡を受ける会社が「建設業許可の要件を満たしている」こと
- 事業譲渡契約の成立後、30日以内に承継届を提出すること
事業譲渡の場合は「許可をそのまま引き継ぐ」というよりも、要件確認をした上で「新しい会社に許可を承継させる」という扱いになります。
建設業許可を承継できないケース
一方で、以下のような場合は承継ができず、新規申請が必要になります。
- 相続人が要件を満たしていない(経営業務管理責任者になれないなど)
- 合併や分割後の法人が要件を満たしていない
- 承継届を提出期限内に出していない
「承継できる」と思って放置していると、結果的に許可が失効し、無許可営業となるリスクがあります。
建設業許可の承継に必要な手続き
承継が認められるケースでは、「承継届出書」を提出します。
主な添付書類
- 承継の事実を証明する書類(戸籍謄本、合併契約書、事業譲渡契約書など)
- 経営業務管理責任者・専任技術者の証明書類
- 承継後の会社の登記事項証明書
- 財産要件を満たす証明(残高証明書、決算書など)
提出期限は原則「承継の事実が発生してから30日以内」です。
建設業許可を承継するときの注意点
- 要件を満たす人材がいるか確認すること
承継後に経営業務管理責任者や専任技術者が不在だと、承継は認められません。 - 承継届の期限を守ること
期限を過ぎると「承継不可」となり、新規申請をやり直す必要があります。 - 公共工事や入札の資格に注意
承継の間に許可が失効すると、経審や入札参加資格にも影響します。
行政書士に相談すべき理由
建設業許可の承継は非常に手続きが複雑で、添付書類も状況によって大きく異なります。
- 相続 → 戸籍関係の証明が必要
- 合併・分割 → 登記事項証明書、契約書類が必要
- 事業譲渡 → 譲渡契約書、財産証明書などが必要
承継の可否を誤って判断すると、許可が失効し再取得まで事業ができなくなる恐れもあるため、専門家への相談がおすすめです。
まとめ:建設業許可の承継は例外的に認められる
- 建設業許可は原則「承継不可」だが、相続・合併分割・事業譲渡のケースで例外的に可能
- 承継届は発生から30日以内に提出しなければならない
- 要件を満たさない場合は承継できず、新規申請が必要
- 承継をスムーズに進めるには、専門家のサポートが有効
建設業許可の承継は「時間との勝負」でもあります。
代表者の死亡や会社再編などが起こったときは、できるだけ早く行政書士に相談することをおすすめします。