中小企業・小規模事業者にとって、デジタル化はもはや“余裕があれば取り組むもの”ではありません。
人手不足、最低賃金の上昇、インボイス制度、電子取引の義務化、サイバー攻撃の増加――
こうした経営環境の変化に対応するためには、業務プロセスそのものを効率化することが必要です。
その取り組みを後押しするのが IT導入補助金2025(令和6年度補正) です。本記事では、制度の全体像を分かりやすくまとめ、「まずはこれだけ押さえれば迷わない」というポイントを整理します。
■1. IT導入補助金2025とは?
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の 生産性向上 を目的に、
業務効率化に役立つ ITツール・サービスの導入費用を補助する制度です。
2025年度の特徴は次のとおりです。
●特徴① 業務プロセスのDXを目的とした補助金
対象は「単なるHP制作」ではなく、
会計・受発注・在庫管理・決済・予約管理など、実際の業務を効率化するITツール。
●特徴② 補助率が引き上がる特例がある(重要)
2025年度は、賃上げに取り組む事業者を優遇する仕組みが明確に存在します。
以下の要件を満たすと補助率が引き上げられます。
【補助率UPの要件】
地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が
3か月以上、全従業員の30%以上存在すること
これを満たす場合、補助率は
通常1/2 → 特例2/3 に引き上げ
となります。
●特徴③ 導入後の「活用支援」も補助対象
2025年度からは、以下の導入後サポートも補助対象に明確化されました。
- マニュアル作成
- 操作研修
- 導入支援
- 初期設定
- 保守サポート
- 活用コンサルティング
「導入したけど使いこなせない」という問題を解消するための仕組みです。
●特徴④ インボイス制度・電子取引に対応した枠が拡大
会計・受発注・決済のデジタル化が必須となる中、それを支援するための専用枠が強化されています。
●特徴⑤ サイバー攻撃対策の専用枠が新設
IPAの「サイバーセキュリティお助け隊」に登録されたサービスを導入することで、
セキュリティ対策の費用が補助されます。
■2. IT導入補助金2025の4つの類型
2025年度は次の4つの枠で構成されています。
【1】通常枠(もっとも利用者が多い枠)
●概要
業務効率化に直結するITツール導入を目的とした基本枠。
●補助額
- 業務プロセス 1〜3:5万円〜150万円未満
- 業務プロセス 4以上:150万円〜450万円以下
●補助率
原則:1/2
特例:2/3(最低賃金+50円以内の従業員30%以上・3か月以上)
●対象経費
- ソフトウェア購入費
- クラウド利用料(最大2年)
- 導入設定
- 初期設定
- マニュアル作成
- 操作研修
- 導入後のサポート
- 活用支援コンサルティング
●対象となる業務プロセスの例
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務
- 供給・在庫・物流
- 会計・財務
- 業務固有(建設・製造など)
- 業種固有の業務
- 自動化・分析ツール(汎用プロセス)
❗注意:ホームページ制作は原則対象外
通常枠は“業務プロセス改善”が目的のため、次のようなHPは対象外です。
- コーポレートサイト
- 店舗紹介サイト
- WordPressデザインリニューアル
対象になるのは、次のような“業務機能付きWebシステム”です。
- 予約管理機能付きサイト
- 受発注管理システム
- CRMと連動した会員管理サイト
- 在庫管理+ECシステム
【2】複数社連携IT導入枠(商店街・地域DX向けの大型枠)
複数の中小・小規模事業者(10者以上)が連携してDXを進める枠。
●補助額
- 基盤導入+分析系:最大 3,000万円
- 事務費・専門家費:200万円
●補助率
- 50万円以下部分:小規模4/5、その他3/4
- 50万円超〜350万円部分:2/3
●導入可能な取り組み
- 商店街のキャッシュレス化
- 電子地域通貨
- POS・レジの統一
- AIカメラによる来店分析
- デジタルサイネージ
単独店舗では難しい取り組みを一括で行える枠です。
【3】インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ツール導入を支援。
●補助額
- 50万円以下:3/4(小規模4/5)
- 50万円超〜350万円:2/3
- PC・タブレット:10万円まで(1/2)
- レジ・券売機:20万円まで(1/2)
●対象経費
- 会計ソフト
- 受発注システム
- 決済システム
- クラウド利用料(最大2年)
- 導入支援・研修
- オプション(セキュリティ等)
- ハードウェア(PC・レジ等)
【4】インボイス枠(電子取引類型)
発注企業が受発注ソフトを導入し、取引先の中小企業へ無償でアカウントを付与する取組を支援。
●補助額
最大350万円
●補助率
- 中小企業:2/3
- 大企業:1/2
【5】セキュリティ対策推進枠(サイバー攻撃対策の枠)
IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスを導入する場合に補助。
●補助額
5万円〜150万円以下
●補助率
- 中小:1/2
- 小規模:2/3
■3. 申請の流れ(STEP1〜STEP5)
【STEP1】制度理解
まずは公募要領で制度全体を把握。
【STEP2】GビズIDプライム取得 & SECURITY ACTION宣言
●GビズIDプライム
発行には約2週間かかるため早めに申請。
●SECURITY ACTION
★1または★2の宣言が必須。
ID発行は2〜3日。
【STEP3】IT導入支援事業者・ITツールの選定
補助金は 事業者単独で申請できない ため、必ずIT導入支援事業者と進める。
【STEP4】交付申請(共同作成)
- マイページ招待
- 基本情報入力
- 必要書類添付
- 予定ツール・効果指標を入力
- 最終確認し提出
【STEP5】交付決定 → 導入 → 実績報告 → 補助金入金
特に重要なのは次の点です。
❗交付決定前の契約・発注は全て補助対象外
これは最も多いミスなので必ず守る必要があります。
■4. まとめ
2025年度のIT導入補助金は、制度内容が整理され、
- 通常枠
- 複数社連携枠
- インボイス対応類型
- 電子取引類型
- セキュリティ対策推進枠
という明確な構造になりました。
特に通常枠は「業務プロセス数」で分類され、補助率UPの特例(最低賃金+50円以内・30%以上・3か月以上)も追加されています。
第1回のこの記事で全体像を把握しておけば、次回からの詳細解説がより理解しやすくなります。

